僕は、野球というスポーツの世界で生きてきました。
子供のころから野球を始め、少年野球時代、甲子園に出場した時、社会人野球時代、そして千葉ロッテマリーンズでプロ野球選手としての道を歩み始めて以降、
その時々で色々と想い出のある曲、思い出す曲はいくつかあります。
しかし、このコラムの依頼を聞いた時に自分の頭に真っ先に思い浮かんだのが、「美しき狼たち」という曲。
この歌は再放送された「あしたのジョー」の主題歌です。
子供の時に口ずさんでいたこの歌を再び唄ったのは、2000年のシドニー五輪の準決勝の前夜でした。
強豪“キューバ”との準決勝を控えての決起大会で、チーム全員で誓ったことは「逃げない」ということ 。
どんなに強い相手でも逃げずに立ち向かっていこうとの話になりました。
その時に、当時コーチだった林裕幸さんが突然こう言ったのです。
「今から自分がアカペラで歌を唄うから聞いてくれ。知ってるものは一緒に唄ってくれ!」と。
それが「美しき狼たち」です。
この歌を聞き、知っているものは一緒に唄ったことで、チームの一体感は更に増し、準決勝で闘うことが出来ました。
その時以来、僕の心にこの歌の歌詞が響いてずっと離れず、大切な歌になりました。
自分は男で、野球という世界に身を置き闘い続けてきたので、この歌の詞が身に染みました。
「男なら闘う時が来る、這ってでも進まなければならない時がある」、それは愛する人たち、守るべきものたちのために立ち向かうということ、と受け止めています。
シドニー五輪後、怪我に苦しみ、リハビリや練習に向かう車の中でこの歌を聞き、自らを鼓舞してきました。
もちろん、約1,000日振りに1軍のマウンドに復帰した時も、そして引退する時まで、ずっと「美しき狼たち」は登板時の曲として掛けていました。
復帰後はリリーフ登板が多かったので、試合再開までの時間が短く、サビのところまで行きつかなかったのですが(笑)。
自分の人生に向き合い、闘っている後輩たちにバトンをしたいのはこの「美しき狼たち」という曲と、「逃げずに立ち向かう」という気持ちを持つこと。