コラム[My バトンソングス]第1回
  • Myバトンソングス コラム01
    近田 春夫
    ミュージシャン/ 音楽プロデューサー
    近田 春夫
    100年後の子供に贈る歌
    2019.02.11

    こうした場合には一体どういった歌が相応しいのか?
    100年後の子供達に聴いてもらいたい、聴かせたいということなれば、先ずはその歌を何故選んだのか、動機というか理由付けが第三者的に見てもちゃんと納得のいくものでなければ、これは始まらない話のような気がした。単に自分がその歌を好きだから、というのだけでは、企画の趣旨(目的)には応えていないのではないか、と思ったのだ。
    そこで私はこう考えた。なるべくなら今の時代の傾向を反映しているような音源が望ましい。というのも、この企画の発案された頃の音とはこのような感じであったと、100年後に検証出来る/し易いようなものの方が、子供たちだって資料的に有難いに決まっているだろうと思うからで、すなわち大前提は「タイムカプセル」なのだという認識/自覚を持てているか……?
    そうした前段を踏まえ、私は選曲のジャンルを、J-POPだけにしぼりその中での"この一曲"を考えることにした。
    w-inds.『Long Road』のような歌は、色々な意味で、歌謡曲時代には作り得なかったろう。ここには"J-POPならではの音"の、普遍的魅力が満ち溢れている。すなわち非常に職人肌というか、高度な内容を、口当たりの良さで、それと気付かせぬようにする。そうしたことで仕上りの良し悪しを競い合うような『美学』がここにはある。それこそがJ-POPの味わいといって、あながち的外れでもあるまい。
    100年後、果たしてこの音がどう聴こえるのか? また、自分は遠い未来と繋がっているんだといった、何処か時空を超えて叙事的ともいえる、スケールの大きな景色が映し出される歌詞に、未来の子供達は何を思うのか?
    そして、曲中にラップの挿入されるスタイルも、生まれはJ-POP以降である。
    そのオーセンティックな、出来の良い例としても『Long Road』は、是非とも100年後の子供たちに伝えたい、名曲だと思うのである。

     

    2019年2月
    近田 春夫